三技協Optiマガジン第9号
01.[対談]セキュリティよもやま話(7)--
 

○はじめに

「企業競争優位性の確立」と「ビジネスの生産性向上」をめざすBPIA(ビジネスプロセス革新協議会)が主催する「日本版SOX法研究会」の第7回研究会が7月11日に開催されました。
この研究会では、中島洋氏(経済ジャーナリスト、日経BP社編集委員、(株)MM総研取締役所長)がナビゲータを務められ、当社のCSR推進本部長の遠藤勉及びオプティマイゼーション営業本部長の徳永雅志が、三技協におけるサイバーマニュアル(ナレッジマネジメントシステムの当社商標)による内部統制の取り組みを披露しました。ここにその概要をご紹介します。

 
1.三技協の内部統制に関する取り組みについて

昨今、政府による日本版SOX法(以下、「JSOX法」という)の推進もあり、企業の内部統制への関心が高まっています。JSOX研究会のこれまでの講演では、SAP、Oracle、Microsoft社など米国 SOX 法に基づいて内部統制を進めた外資系大企業における事例紹介がほとんどでした。
当社はサイバーマニュアルを経営のプラットフォームとして運用することにより、独自の内部統制システムを構築してきています。JSOX法施行に備えこれから内部統制の仕組みを検討される皆様のご参考になれば考え、以下にご紹介します。
 

日本版SOX法研究会の講演風景

日本版SOX法研究会の講演風景
 

2.サイバーマニュアルの導入と発展の軌跡

当社は、携帯電話の基地局の電波測定やETCの電界強度測定など、皆様の日常生活を支える情報通信に関するエンジニアリングサービスを提供する企業です。
例えば、携帯電話において、理論上では電波が問題なく到達するはずであっても、実際には地形や建造物による障害など様々な原因によって伝播状況が劣化し、正常な通信(通話等)ができないことは珍しくありません。こうした場合、高品質で効率的に多くの人が使用できるようにするために、アンテナの角度・仰角や送信出力の調整をおこない、電波環境を最適化します。このような最適化業務を業界では「オプティマイゼーション(Optimization)」と呼んでいます。
当社では総ての業務・プロセスの問題点や非効率になっている部分を、「お客様の真のニーズに応える」という視点で常に改善活動を続けて最適なサービスを提供するというより広範な意味をこめて「The Optimization Company」を経営のスローガンとして掲げています。

 
日本版SOX法研究会の講演風景

 

サイバーマニュアルは、本来、社内のエンジニアやスタッフの持つノウハウ、経験知を電子マニュアルとして蓄積・共有することで、製品とサービスの品質向上を目的として運用してきたナレッジマネジメントシステムです。

当社では、サイバーマニュアルのコンテンツを5つの根幹ツリーで構成しています。なかでも次にご紹介する3つは、どの企業に共通するものであると考えます。

(1)経営ツリー:会社の目的やビジョンなど、経営に関する基本的な考え

経営ツリーは、企業の理念や目的・使命などを明示し、会社の舵取りに重要な執行基準なども掲載しています。従業員側と経営側が、事業目標達成のために意図や意識を共有しています。
特筆すべきは多くの企業では経営層にしか公表されない意思決定や予算のプロセスといったものも、全従業員に公開されている点で、誰もが使命感を持って日々の業務に携れるようになっています。

(2)市場ツリー:事業ドメイン
市場ツリーは、市場全体の動きを俯瞰 ( ふかん ) した上で最適な顧客戦略・商品戦略を策定し、市場における当社の存在価値を高める目的で、市場、顧客、商品の情報を共有しています。
サイバーマニュアルのコメント機能によって、案件毎に日々営業報告がなされ、顧客の望んでいるサービスをきめ細かく把握して効果的な提案をおこなうといった経営の自立化を担っています。

(3)業務ツリー:業務別の作業手順とノウハウ
業務ツリーは、現場業務の方法や手順などといった、業務オペレーションを全て記載し、「智の伝承」を図る性質を備えています。こうしたナレッジは当社の長年にわたるエンジニアリングサービスの中で培われ、ネットワーク設計や現地調整などに大きく貢献してきました。

ナビゲータ中島洋氏からの質疑
 

システム利用の定着を図るため、当社ではトップダウンのスタイルでサイバーマニュアルを導入・運用してきました。経営ツリーや業務ツリーについては、従業員の自由な閲覧を前提としていますが、市場ツリーに限り、顧客情報や営業情報が主体であることから、アクセス権限を設定しています。

3.サイバーマニュアルと内部統制

当社の情報システムは、経営管理など数字を扱うバックボーンには SAP 社のR3を、またフロントサイドでは前述のサイバーマニュアルを展開しています。

運用実績の特徴として、以下の2点が挙げられます。

1)常に進歩を続けている
サイバーマニュアルは当初、業務改革の一環として現場の智を文書化し伝えていくことが主体でしたが、さらに高いレベルでの活用をめざし、現在では経営情報や営業情報などを取り扱うようになってきました。

2)過去の失敗事例などの開示
同じような過ちを繰り返さないため、また成功事例の要因を明確に把握するため、過去の失敗事例などを開示するようになりました。

 
参加者からの質問が相次ぎました。
参加者からの質疑が相次ぎました。

 

JSOX法の基本は、「適切な情報開示」と「内部統制の強化」にあります。例えば、決算の数字を”作る”ために、期末に1日のうちに桁外れの受注・売上・利益が計上されることがあるかもしれません。日々の営業活動をモニタリングしていれば、まず起こりえないケースですが、売上の架空計上や押し込みなどにつながる可能性を否定できません。

当社は、社内統制を客観化し、検収ベースとしてお客様からサインを必ず頂くようにしていますので、もともと前述のような粉飾は起こりえない環境になっています。

また当社には、資本関係100%の子会社が3社ありますが、会計基準・経理実務を統一化しており、確実にモニタリングできる体制になっています。

このように当社は、エンジニアリングサービスにおける改善活動の成果をサイバーマニュアル上で展開し、これを企業全体の活動へと広げていきました。また、企業活動で予想されるリスクも、事前に抽出・分析・評価をおこなって対策方法を明示し、販売・会計処理のルール・承認に至る基準もオープンにして情報を共有化しています。すでに、経営概況や中期計画といった企業活動の全体像や、計画を策定する手順など、経営プロセスのほとんどを可視化・公開してオープン経営を実践しています。

現在ではサイバーマニュアルを駆使し、ほぼ全ての企業内活動の可視化を実現しました。経営層も従業員も同じ情報を閲覧でき、関係者が情報を共有するとともに、適切な統制が図られる環境は、当社が推進する「適切な情報開示」と「内部統制の強化」のあり方そのものです。

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講演では、ご参加の多数の皆様に興味を持っていただけたようですが、内部統制の実践的な手法やプロセスといったものの他に、サイバーマニュアル自体へのご関心がさらに高まったものと思われます。

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